終章 アルコール症の悪循環と自助グループについて(7)
第三節 原因と結果の逆転
●原因と結果の逆転
前節で説明してきたように、飲酒生活が原因で種々の障害が生まれ、さらに飲酒に走るという悪循環ができてしまうのがアルコール症です。
つまり、そもそもの始まりは依存的な飲み方に問題があって、その結果として種々の障害が生まれたはずです。
しかし、自分がアルコール症になっていることに気付かない人はそうは思っていません。
なぜなら、彼らの中で原因と結果の逆転が起こっているからです。
たとえば、酒が切れると手が震えて仕事にならない。
だから仕方なく一杯飲んで仕事にかかるのです、と言う人がいます。
本来は、アルコール症が原因であり、手が震えるなどの離脱症状は結果に過ぎないのですが、彼は頑固に手の震えということを次の飲酒の原因と考えているわけです。
同じように、飲酒生活が原因で障害ができた人間関係なのに、家族が冷たいから酒を飲んでしまうとか、職場の人々が自分を認めないからつい飲んでしまうと考えているアルコール症者もいます。
これも原因と結果の逆転です。
さらに、長年にわたる飲酒が原因で、アルコール症者の心がマイナスの感情に傾いていくという結果になっているのに、そのことに気付いているアルコール症者も少ないのです。
彼らはこう言います。
このどうしようもない思いから逃れるために、自分は酒を飲んでいるのだ。
ここでも逆転が起こっています。
その他、飲酒生活の中で生活者としての能力が低下し、生活場面での壁をしらふで乗り越えられなくなっていることに気付かない人もたくさんいます。
そして、ここでも原因と結果の逆転が起こっています。
せっかく断酒していたのに、自分の思い通りにならないストレスに出くわして再飲酒してしまった。
このように述べる人も、原因と結果の逆転が起こっているのです。
つまり、ストレスがあったから飲酒したという時、この人にとってそのストレスが飲酒につながる原因と思い込んでいるわけです。
しかし話は全く逆で、飲酒生活の結果ストレスに弱い人間になったのではないでしょうか。
身体面の病気についても同じことが言えます。
体がだるいから、胃が痛いから、足がしびれて痛いから、どうしようもなくて飲んだとアルコール症者が述べる時、ここでも原因と結果の逆転が起こっているわけです。
本当は、飲酒を続けているから身体が悪くなったはずです。