アルコール症テキスト 質問と解答
結論から言えば、世間で言われている「アルコール中毒」と「アルコール依存症」とは同じ病気です。しかし、このアルコール中毒という呼び方は、言葉を正確に考えると誤りです。「中毒」という言葉の「中」という字の意味は「あたる」ということです。
つまり「中毒」という言葉は、「毒にあたる」という意味を持っています。ですから本来は、食中毒、一酸化炭素中毒、鉛中毒など、毒物にあたる病気のみに使うべき言葉のはずです。
しかし現在では、麻薬中毒、覚醒剤中毒、アルコール中毒というように毒にあたらない病気にも誤って使用されています。これらの病気は「薬物にたよる」ようになる病気です。その状態を正確に表現するには「依存=たよる」という言葉と使うべきでしょう。
麻薬依存症、覚醒剤依存症、アルコール依存症という表現がその実体を正しく伝えています。
言葉にはイメージが伴います。そのため、アルコール中毒という誤った表現は当然多くの誤解を生み出してきました。その中で一番大きい誤解は「中毒」だから入院して「解毒」すれば治るはずだということです。
実際我々医療者は、患者本人や家族の方々から「どのくらいの期間で治りますか」という質問をよく受けます。しかし、依存症のという病気の治療に終点はないのです。
アルコールに依存してしまっている自分自身を認め、アルコール依存症の正しい知識を本人も家族も身につけ、アルコールをやめ続けていく以外にこの病気からの回復はあり得ません。そのために種々の治療プログラムが用意されており、本人だけでなく家族も治療プログラムに参加することが大切なわけです。
また治療に終点がないわけですから、断酒会やAAなどの自助グループに参加を続けることが必要です。