アルコール症テキスト 質問と解答
アルコールを切ると、しばらくして種々の離脱症状が出現します。
この離脱症状から逃れるために再飲酒を繰り返してきたわけです。
しかし、この離脱症状をとにかく飲まずに乗り越えると、体調もよ
くなり、気分も楽になり、感情も安定し、酒を飲む気もしないとい
う、まるでアルコール依存症がまったく治ってしまったのではない
かと思われる時期がきます。
しかし、この時期は見かけの安定した時期であり、決してアルコ
ール症が治ったわけではありません。これから何度となく繰り返さ
れる断酒の危機を乗り越えていくために、いくつかの注意事項を並
べてみましょう。
1 断酒会やAAなどの断酒例会にできるだけ数多く出席すること。
これは一番の基本方針です。
今までの飲み仲間達と手を切り、飲ま
ずにがんばっていく断酒仲間を作っていくことが大切です。
今までの飲酒環境を断酒環境に変えていく努力が必要となってき
ます。
また断酒例会は、今まで飲酒の時間帯であった夜に行われて
いますので、その面でも例会出席は、
飲まずに過ごすために有効です。
2 危険な場所には近づかないこと。
現在の社会は完全に飲酒社会であり、酒席への誘惑は昔と比べて
非常に多くなっています。
しかし、酒の飲める場所に行きますと、その場の雰囲気にのみ込まれて、つい酒に手を出してしま
いがちです。
それに、一般の人々はアルコール依存症に対する認識がなく、中には「一杯ぐらいならいいでしょ
う」と、しつこく飲酒を強要する人がいます。
せっかく断酒していたのに、この誘惑に負けて
再飲酒してしまう人
がなんと数多くいることでしょう。
酒の席にはなるべく近づかないようにしましょう。それでも、やむを得ず宴会などに出た場合は、
その帰りに気を付つけることです。
宴会の途中は、飲んではいけないと緊張しており、何とか飲まずに我慢できても、その緊張がとれ
たときに、つい飲んでしまうことがあります。また、帰り道「なぜ自分だけみんなと同じように酒
を飲んで楽しんではいけないのだ」という淋しさや、やるせなさがつのって、飲んでしまう人が
案外多く見かけられます。
(やむを得ず宴会に出席した時は、むしろその帰り道や、帰宅してから
油断のないように
注意すること。)
次に「自分はもう大丈夫だ」とばかり、自ら酒の飲める場所に出入りし、ジュースなどでその場を
過ごす人も多いようですが、このような態度は、はっきりとまちがっています。
自分はもう大丈夫なのだという態度を、これみよがしに飲んでいる人々に見せつけるような
子供っぽい態度はやめておきましょう。このような人も、ほぼ飲酒再発してしまいます。
とにかく「君子危うきに近よらず」という態度で断酒生活を続けることが大切です。
3 お腹を減らさないこと。
空腹時には血中のブドウ糖が低下し、ついイライラしがちです。このような時に、強い飲酒欲求が
生じてきて飲んでしまった経験があるでしょう。人間の体は、空腹時に飲酒欲求がつのるように
できているのです。このようなときに食事を取りますと、飲酒欲求がウソのように消えていく
ことが多いわけです。
だから、常に腹を減らさないように注意しておくことが肝心です。
断酒を軌道に乗せる期間中は、少しぐらい太ったとしてもいいのではないでしょうか。
4 無理はなるべく避けること。
断酒に踏み切った初期の頃、張り切って今までのタバコやコーヒーなどの悪習慣もついでに
断ってしまおうと考える人がいますが、長年すべてに依存してきたアルコールを断つだけでも
大きなストレスなのです。
だから断酒生活が安定するまでは、禁煙、禁コーヒーなど、さらにストレスのかかることはやめて
おいた方がいいでしょう。とにかく最初は断酒だけを最優先させるのです。禁煙などは、断酒生活
が安定する断酒後2年目ぐらいから実行されたらよいでしょう。
断酒を実行すると甘いものが欲しくなったり、タバコが増えたり、一日何杯もコーヒーを
飲んでしまう人がありますが、重い糖尿病や胃
潰瘍などを合併している人を除けば、断酒が安定
するまで、それらの
ものはいくら増えても良いと我々はアドバイスしているくらいです。
ただ、市販のドリンク剤などは駄目です。あれにはほんの数パーセントですが、アルコールが
含まれているからです。
5 精神的にイライラするようなことは避けること。
かけごとなどは、勝ち負けがありますからどうしても精神的にイライラしがちです。この時に飲酒
してしまう人があります。
また、プロ野球を観戦して楽しむのは良いのですが、ひいきのチームにあまり熱中
すると、負けた時にイライラして飲んでしま
う人もあるのです。優勝するチームも10回に6回
しか勝てず、後の4回は負けるのですから、プロ野球観戦にのめり込むのは少し控えて下さい。
6 周囲の人々に断酒したことをはっきりと言うこと。
飲み友達には自分が断酒した事実をはっきりと宣言することです。
あなたが飲まないからといって批難したり、離れていく仲間であれば、それは本当の友達では
なかったと考えた方がいいでしょう。
本当の友達ならば、あなたが断酒したことを評価してくれるはずです。
また職場や親せきの人々にも、もう飲まないということをはっきり
と言っておきましょう。
先程述べましたように、断酒を宣言していても「体も良くなったことだし一杯ぐらいなら」と
飲酒を強要する人が一人か二人は必ず存在します。あなたが断酒していることを伝えていないと、
さらに誘惑は多くなります。一度や二度なら拒否できても三度、四度と誘われると、ついには飲ん
でしまうことが多いのです。
それならば、最初から断酒を宣言しておいた方が良いでしょう。断酒を続けるにつれ、最初は半信
半疑だった人達も、最後には酒をやめたあなたの勇気と実行力を評価するように必ずなってくるも
のです。
7 抗酒剤の力を最大限に利用すること。
抗酒剤の効用については、別項目で説明してあります。
8 最初のうちは仕事で無理をしないこと。
とにかく最初は、断酒継続が最優先事項となります。今までの失敗を一度も取りもどそうとして、
バムシャラに働く人が多いのですが無理は禁物です。残業などはなるべくひかえて下さい。
残業のために断酒会やAAの出席が途絶えがちになってしまい、失敗してしまった人が数多くいま
す。
オーバーワークになりますと、どうしても疲れがたまりますし、その時に飲酒欲求がつのって
きて、つい酒に手を出す人も多いのです。断酒生活が安定するまでは、できるだけ仕事上の無理は
避ける事が大切です。基本的な断酒のための提案を述べましたが、まだまだ断酒のための具体的な
注意事項はあると思います。それはまた別の機会にゆずっておきます。
まとめ
① 断酒会、AAにできるだけ数多く出席すること。
② 危険な場所には近づかないこと。
③ なるべくお腹をすかさないこと。
④ 最初のうちは禁煙などの無理はなるべく避けること。
⑤ 精神的にイライラすることは避けること。
⑥ 周囲の人々に断酒宣言をはっきりとすること。
⑦ 抗酒剤の力をかりること。
⑧ 仕事で無理はしないこと。