アルコール症テキスト 質問と解答
この、断酒後の離脱症状がおさまり、体調も気分も良くなって、
飲酒欲求がなくなった時期というものは、断酒後数年経過し、種
々の身体的、精神的、社会的な危機を乗り越えた結果としての真
に安定した時期とは全く性質が異なります。
これは見かけ上の安
定した状態にすぎないのです。現在は、山積みになっているいろ
いろな問題を一応棚上げして治療に専念しているわけですので、
かなりのストレスから逃れている状態なわけです。
また周囲の環
境も、断酒しようと集まっている人々の中にいるわけですから、
その雰囲気の中での安定した状態とも言えるわけです。
しかしみ
なさんが、それぞれの家庭内の問題や、復職後の問題に直面され
たとき、数々のストレスが襲って来るものと覚悟しておかねばな
りません。嫌な場面に直面したり、自ら決断を迫られる問題に出
会った時、今までみなさんは、おそらく飲酒に逃げていたのでは
ないでしょうか。
そのような条件反射的な飲酒欲求は、これからの生活の場面で
繰り返し起こってくるでしょう。またそれ以外に、断酒後一年か
ら二年は、慢性の禁断症状と言うべき、精神的、身体的な不安定
さが一定の期間をおいて波のように繰り返されるものです。
このような時に、飲酒欲求が強く出現し飲酒再発する人々も数
多いのです。特に、通院を中断されたり、断酒会、AAなどの断酒
環境から離れてしまい、世間の飲酒環境にのみ身を置いていますと、
飲酒再発は必発となります。
とにかく、断酒数週間後に見られる安定した時期は見かけの安定
にすぎないと自覚し、今後の治療、断酒生活に備えなければなりま
せん。