アルコール症テキスト 質問と解答
断酒開始直後に出現する手や指の振戦(ふるえ)、発汗、睡眠の障害、頻脈、後頭部の不快感、高血圧などに代表される自律神経症状や、イライラ感、気分のおちこみ、神経過敏などの精神的な不安定、食欲不振、吐気などの症状は、一般にアルコール離脱小症状と呼ばれています。
この時期の種々の不快感から逃れるために病的飲酒欲求が起こり、飲酒に走ってしまっていたわけです。
しかし、これらの危機を乗り越え、このような不快な症状が消えてくる断酒後約二週間目にもなりますと飲酒欲求もなくなり、あたかもアルコール症が治ったかのような錯覚に陥りやすいものです。
しかし、この状態は本当に安定した時期ではないのです。
しかし、社会復帰をするにつれ、飲酒生活のために今までやり残してあったいろいろな問題に直面したり、様々な外部の刺激にも身をさらされるようになり、心身の疲労が重なってくると、この飲酒欲求のない静かな時期は破られ、前に述べたような離脱症状とよく似た症状が繰り返し出現してきます。
イライラ感や気分の著しい動揺、衝動性、不機嫌、抑うつ状態、などが出現し、この時に判断力がなくなった、理解が悪くなったなどの訴えも非常に多いものです。
また、口渇、頭の重さ、食欲不振、発汗、不眠などの症状も重なってきます。これらの症状は、長年にわたって繰り返し出現するものと覚悟しておいた方がよいでしょう。
これらを慢性の禁断症状と呼びます。この時に病的な飲酒欲求が起こり、飲酒再発の危険があります。
断酒会では、断酒1カ月、3カ月、6カ月を断酒の節目と呼び、この時期に飲酒再発の危機があると警告しています。
これらの危機は、1カ月断酒、3カ月断酒など目標達成後の気のゆるみから起こるものとされていますが、それだけでなく、この節目の時期に、前述した「慢性禁断症状」の出現が重なり、飲酒再発が多いのではないでしょうか。