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アルコール症テキスト 質問と解答

【答え】
このような悩みは、日常よく聞かれるものです。確かに、あれ程やめにくかった酒を現在真剣にやめている姿を、周囲の人々が冷たい目で見ている。あるいは、いつ飲まれるかという具合に不安のまなざしで見つめられたりすると、本当に腹が立ったり、断酒の張りがなくなったりすることでしょう。
 しかし、ここであてつけのように飲酒してしまえば、今までの努力が水の泡となってしまいます。それに、断酒ということは、人間としての成長をともなわなければならないという点を考えますと、このようなあてつけ飲酒をしようとするような態度こそ、まだ充分にアルコール症からの回復がなされていない証拠とも言えます。
 ここで、人間の信用というものを考えてみましょう。例えば、今まで散々借金を踏み倒したり、金銭的な不義理を続けてきた人が、ある日反省し何カ月か精神修養を積み、自分は生まれ変わった、もうこれからは不義理はしまいと誓ったとします。さて、この人が自分はもう大丈夫だからと銀行などに出かけていき、いくばくかの借金を申し込んだとしましょう。この場合、銀行側は素直にお金を貸してくれるでしょうか。
 みなさんもこの点をよく考えてみてください。今まで散々、酒のために迷惑を掛け続けてきたというマイナスの実績があるのです。
 しばらく断酒を続けたからといって、周囲はそう簡単には認めてくれないでしょう。金銭面での信用問題なら納得できたみなさんも、アルコールの面での信用問題になるとすぐに感情的になり、この質問にあるような気持になってしまうことが本当に多いものです。
 ここで肝心なのは、今までの飲酒によるマイナスの実績を上回る断酒によるプラスの実績を、一日一日積み上げていくことなのです。そのような断酒の努力が、周囲にわからないはずはありません。いつの日か、みなさんの断酒の努力が周囲に評価される日が必ずやってきます。
 信用を追いかけている間は信用は得られません。毎日毎日、断酒を続け、日々の生活を真面目にすごす。そして、気がついてみると、いつの間にか周囲の信用が得られていた。人の世ではこのような場面がよく見られます。
 みなさんも信用を追いかけず、日々の断酒を実行し、自己を改善し続ける努力をして下さい。そうすればいつの日か、あれ程求めていた信用が得られていたことに気付くことでしょう。


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